自分を知る、楽器を知る(3) 重さ

前回のブログで
私たちがピアノを弾く場合、必要に応じて使う重さとスピードをさまざまに組み合わせることによっていろんな音を出すことができる
という話をした。ここで大切になるのは、“ピアノでいう場合の” 重さとは何か。ということ。
重さを使うということと、圧力をかけるということを勘違いしているケースがとても多いからだ。
重さとは何か。また物理みたいになってしまうけど、それは重力があってこそ生まれるもの。私たちが、地球の真ん中にむかって引っ張られているから、重さというものが生じる。
ピアノの前に座って、ピアノを今弾こう、としているときの態勢を考えてみよう。椅子に座って両腕を鍵盤の上にまだ音を出さずに載せている状態。これは、重力に反していることになるのはわかるかな。なぜって、腕を本当に重力に任せていたら、だらっと下に落ちるでしょう?鍵盤の上に<乗せている状態>、というのは、音が鳴らないようにするために、腕が落ちないように支えている。つまり、筋肉が緊張している状態。
これがわかれば、ピアノでいう重さをのせるという作業は、今支えていた腕を鍵盤に“落とす”、つまり落ちないように腕を支えていた筋肉を“ゆるめる”ということは、わかるだろう。ゆるめることで、体の持つ“自然な重さ”を使うだけだ。それ以上、押したりという“圧力”は全く必要ない。
原則3)ピアノでいう “重さ”は、ゆるめることから生ずる。
でも、必ずしも腕の重さ全部が必要なわけではない。その都度必要な音に応じて、体のどの部分の重さを使うかを変える。
さっきの、ピアノを今から弾こうとする状態をもう一度思い浮かべよう。椅子に座って音が鳴らないように、鍵盤の上に手を載せている状態。もし、指の重さだけが必要なら、この状態から指の付け根(第3関節というのかな)から先の部分をゆるめてぽとっと鍵盤に落とす。指の付け根を含め、そこから腕、肘のほうにかけては、鍵盤に落ちないように、さっきと同じ支えている状態を保つ。
ここで気がついただろうか。本当に“指だけ“の重さをぽとっと落とすことができた人にはわかったと思うけれど、指だけの重さというのは非常に限られている。それを落としただけでは、鍵盤は少し下がるだけで、底まで落ちない。それは、鍵盤に“上に戻ろう”とする抵抗力があるから。指だけの重さというのは、この鍵盤の持つ戻ろうとする力には足りないのだ。もし落ちた人は、指だけの重さではなく押してしまっている。
このことからも、重さだけで音を出すのではなく、最初に書いたように、その時の必要性に合わせた適度な重さに、適度なスピードを加えることで音というものを作ることができるのがわかると思う。
もし手の重さが必要なら、第3関節の代わりに手首から先をゆるめて手全体を指先に落とす。先ほどと同様、手首を含めそこから腕、肘の方にかけては支えた状態を保つ。
腕の重さが必要なら、肘から先を落とす。同様に肘は落とさない。肘が支えの軸になるから。
それ以上必要な時は、体の重さを背中から送り込む。その場合には、背中のさらに後ろ、つまり腰が軸となる。
原則4)ピアノでいう重さ=体の自然な重さ。

どの重さを使うかは、その時々に必要な音による。それについては、次回に!
私のサイトFromBerlinへは
こちらからhttp://www.rikakomurata.com