京都珍道中

とあるレッスン通訳の仕事で京都の大学に伺った。自宅からの往復移動時間も入れて25時間という、かなり短い滞在のなか、なぜやらミニハプニングの山。珍道中となった。 

まず、大学で。私はマイク片手にホールのステージで通訳の仕事。通訳をしているときはかなりの集中をしているので、何かに気がそれることは今まで一度もなかったのに、なんと!さすが京都。通訳中、目の前で、ホールの上からボタッと黒いものが落下。よくみると、

ご、き、ぶ、り。

しかもみたことないぐらい巨大! ひぃぃぃぃぃ。 舞台上に荷物(スーツケース)も置いていて、そのそばに落ちたので、超巨大ゴキブリがどこに移動するか気がきではなく、頭の中はゴキブリのみ。通訳の思考回路は完全停止。プロ意識消滅。(プロじゃないが。) そして、マイクを持ったまま、「え、今のゴキブリ?」と言ってしまった。仕事そっちのけである。 舞台で聴講している生徒さんの1人と目があって、「今のゴキブリ?」とあいかわらず通訳そっちのけで質問したら、その子は平然と、 「はい」と頷いてくれた。 まったく慌てる様子なし。さすが京都。

昔、演奏中に鍵盤の上にハエが落ちてきたことがある。本番中ですぞ。ハエは弱っていて動かないので、なんとか演奏中、指で踏み潰さないようにと、気が散りまくりで演奏したことがある。そして努力も虚しく、小指でムギュっとふんでしまった時の私のパニックは想像にお任せします。

夜遅い仕事を終え、大学からホテルへ。チェックインを済ませてこれから食事。もう21時になっている。Dは仕事の後は、とにかく2人でゆっくり美味しいものを食べることをいつも心から楽しみにしているので、以前来た時に美味しかった京都駅のお蕎麦屋さんに行こうと、簡単に調べておいた。 ホテル近くにも賑わっている居酒屋さんがいくつかあったが、ものすごい密なのと、「一見さんお断り」的な感じがしたので諦めた。

そしてDと地下鉄で移動。京都駅は21時15分。さっきの居酒屋とは違い、何だかいつもより静かだなと思いながら、レストランのある建物に入り、ショーケースの見本をのぞく。今日は何を食べようか、とルンルンしていたら、

「一般の方ですか?」

と背後から声がする。 一般? ってどういう意味だろう?と振り返ると警備員さん。

「この建物はもうすぐ21時過ぎで閉館です」 

という。 えー。「ではレストランも全部ですか?」ときくと、にっこりと「そうですね」。 がーーーーーーん。がーーーーーん。 え、10月だよ。緊急事態宣言解除だよね? さっき居酒屋さん人が溢れてたよ?えーーー?!全部閉まるって。えー? かなりパニック。 ねぇなぜなの、京都府さん?? 確かに京都駅構内を見ると全てシャッター降りてる。 デパートも全て、「当面21時までに変更します」と。駅近のレストラン街も「すべて」閉店。全滅である。

呆然💦

げ、食べはぐれる。。頭真っ白。 少し周りを見渡したり、ネットで調べたりしたけど、やっぱり開店しているのは怪しそうなとこばかり。 美味しいものを食べられずがっかりするDは、歩くスピードも明らかに落ち、 私も絶望。 そして悲しくも、探すのを諦め、コンビニテイクアウト夕食となった。 ナムナム ま、美味しいからいいんだけどね。 

ホテルで一泊し、翌朝は快晴。気分最高で朝食会場へ。感じのいい係員で「ゆっくりしてくださいね」と言ってくださった。心からゆっくりできそうだ。 バイキングで種類も豊富。美味しそう! 

入り口で「食事中」と書いた番号札をもらい、好きな席にそれを置いて、席を確保してからバイキングを取りに行く。 大きめのトレーの上に大きめのお皿を乗せて、美味しそうなものを物色。ちいさなミートボールが美味しそうで、まず2つ取ったが、お皿の上でやたらコロコロと転がる。それを止めようと、何か他の食べ物も取ろうとしながら、席の方へ目をやると、確保したはずの席に、他の誰かの食事が置いてある。 
おそらく自分でとった席と勘違いして、私たちの席に置いたのだろう。とりあえず、まだミートボール2つしか取っていない大きなお皿の乗ったトレーを持ってその席に行ってみた。でも食事が置いてあるだけで誰もいないので、係の人に 「この席取っておいたのですが」というと、気を利かせて他の席を勧めてくれた。 気を取り直して、自分のトレーを見ると、 

あ!ミートボールが1個しかない!

京都ミステリー。。。消えたミートボール。どこへ。。。。

おそらく、この騒ぎの間にどこかに転がって落ちたらしい。すみませぬ。 消えた席、消えたミートボール。 心は「ゆっくり」所ではなくなってしまった。  いやぁ、 色々ありすぎの25時間の旅。 そして今、ようやく帰路に着く。 ふぅ。 ミートボールが靴の裏についていませんように。