知ることは愛することにつながる?

この曲あまり好きじゃないな、なんて漠然とした感覚が学生の頃についてしまうことがある。それは「何だか弾いてもうまくいかない」「弾いてて面白くない」ということと無意識に結びついている気がする。

それは曲が原因なのだろうか?

何を目指すのか、中身がどうなってるのかよく考えもせず、なんとなく感じるままに歌ったりして弾いていたら、当然練習も目的が定まらず、目的があやふやに練習しても得られるものが少ない。そして練習がマンネリ化..その結果、なんかつまらないと感じる。

まさに悪循環だ。

4/24のカワイのレクチャーでは、パスカルが「ウイーンの謝肉祭の道化」をとりあげる。もっか翻訳中だが、信じられないぐらい面白い。私はなーんにもわかっていなかったのだと気がつくのと同時に、へー、あ、そうなんだ!えー!ということだらけで、レクチャーが進むにつれ、この曲もう一回やり直してみたいと感じさせられる。

この曲で出会う、たくさんの作曲家たち。あの人も、この人も。そしてそれらに出会いながら、大きな一つの建造物となっている作品。それを知って弾いたり、聴いたりするのと知らないのとでは、雲泥の差なことは明らか。

今回は指導者の方も、聴いてたのしむ方ももちろんのこと、専門家を目指す学生たちにもなんとしても聴いてもらいたい。

知ることが好きになることの始まり。逃すと本当にもったいないですよ!

CDの形がみえてきた

世の中は新年度スタート!と何かしら新しい始まりを迎える4月。とはいえ学校関係に勤めているわけでもない私にとって、4月は特に入学式などの区切りがあるわけでもなく、季節だけが桜と共に春を告げてくれる。

そんな私は現在、ひと月ほど前から5月末にお目見え予定の「ラヴェル・ピアノソロ作品全曲CD(2枚組)」の編集作業真っ只中。

数えきれないテイクを全てつぶさに聴きながら、イメージするものに最も近いものを拾い出していく作業は、莫大なエネルギーと時間を要する作業だ。CD2枚分となると、想像を超える大変さ💦

忙しい中、ディレクターとして、相当な時間を割いて共にその作業をしてくれているパスカルには頭が上がらない。

そのおかげで少しずつ形が見えてきた。そして「これ、本当にいいCDになりそうだ」とつい先日パスカルがつぶやいとき、涙が出そうになった。

限られた時間で相当なスピード感で制作を進めてくださるレグルス社の吉岡さんにも感謝が耐えない。平行してセンス抜群のデザイナーの協力で、CDデザインも着々と進めていく。

このCDで私が試みたことは、

「ラヴェルの様々な側面を、作品を通して“私なりの解釈で明確に“表現すること」

パスカルにも

「自分の解釈をしっかりともち、楽譜や文献からラヴェルが求めたであろうものをできる限り想像して引き出し、ある程度のリスクを負う覚悟で思い切ってそれを表現しなければCDを出す意味がない」

と常々言われてきた。

最大限に調べ、考え、想像し、ピアノという楽器から紡ぎ出せるだけの表情を求めて、指先、感性、耳、全てを鋭敏にして試した結果行き着いた今回のCD。今の私にできることは全て尽くした印象だ。

5月28日、私たちの結婚20周年への思いを重ねての大切なコンサートを迎える。そこで初めてお目見えするこのCDも、是非楽しみにしていただきたい。

5月の公演についても近々ブログで取り上げたいと思っている。お楽しみに!