最近さまざまなレッスンで、とにかく体ごと非常に強い力で押し込もうとする弾き方を目にする。感覚を言葉で伝えるのは難しいので、いろんな言葉を駆使したり、音で示したり、弾いて見せたり…時間をかけて丁寧にそういったやり方を説明していくと、ふと何かが見つかる瞬間に出会う。そしてその時、複数の生徒から共通して面白い言葉が返ってきた。
見つかった瞬間、みんな
「これだけでいいんですか?🥹」「楽だ!」
そこで私は即聞き返す。これだけ?ってどういう感覚なの?今まではどう感じてたの?
私も彼らは何を勘違いしていたのか学びたいからだ。
すると、皆、とにかくピアノに全身でぐいぐい入ったり、練り回したり、とにかく
もっと全身で弾くことが良いことだと思っている節がある。でも、私たちに必要なことは
「ピアノという楽器を操る」
こと。自分が求める音が出るよう、
①鍵盤を絶妙な速度で下ろし
②出た音を耳で追い、他の音とのバランスを聴き
③必要に応じてペダルを駆使する。
簡単に整理すると、技術的にはこの3つで音楽を生み出しているわけだ。
①の鍵盤を絶妙な速度で下すには、指が自由に作業できる必要がある、なぜって、鍵盤を下ろす「細部の速度コントロール」は指にしかできない繊細な作業だから。
とある生徒さんは
いや、もっと「腕立て伏せをするような感じ」で腕をぐいっと押し込んでいました。
と表現してくれた。とてもわかりやすい表現で私も勉強になる。腕立て伏せだと、腕から指へぐっと押し込む印象が伝わる。
でも実際腕はピアノ演奏でどういう時に使うのか? それは
指先へ「速度を」送り込む時。
野球のピッチャーやバドミントン、テニスのように、遠くに音を飛ばしたい時に、ある程度の速い速度で鍵盤を下ろすので、指だけでは不可能だからだ。
だから腕立て伏せでは指にのしかかってしまう感じなので、指は自由に動けないのがわかる。
ピアノを弾く時、瞬間的に全身からかなりのスピードを指先に送ることもある。その瞬間、前かがみになる印象があるが、直後にそれを吸収し、音を出した直後はもう指は軽くなっていなければいけない。次の音や次の移動ができないから。
そう考えると、鍵盤に重さがぐいっと乗っかっていることは、まずない。ところが多くの生徒は
かなりの指への負担をかける弾き方をしていて、腕が疲れるという現象が起きている。
下手すると腱鞘炎になったり、ピアノ側は弦が切れたり。
手が疲れるのも、弦がやたら切れるのも、練習した証(あかし)ではなく、やり方を変えた方が良いかもしれませんよ、と言うメッセージと捉えたい。
鍵盤の左右端っこの黒いところに、測りがあると面白いのに、と思う。鍵盤に何キロかかってるか出る仕組みとか。(笑) 鍵盤の底に何キロもかかり続けてることはないんだよ。むしろ、鍵盤の底がトランポリンみたいで、弾力ある感じで次々弾いてる感じかな。
よく生徒に言う
ピアノはフィットネスマシーンではないよ!
村田理夏子公式サイト