「音楽」カテゴリーアーカイブ

CDができるまで(最終回)~ 「写真」

デザインと並んで大切な写真。同じものでも、撮り方で全く受けとる印象が違うことがよくある。

今回の写真は、なんと兄に撮ってもらった。いろんな趣味を持つ兄は、私ととにかく何から何まで正反対。

きちんとしていて、センスがよく、絵が上手いと思えば、険しい山にも登り、多趣味な上、最近は料理もしているらしく、本業はコンピュータ関係のスペシャリスト。

ガサツで、なんでも中途半端な私とは全く違う。

多趣味の一つが写真なのだが、趣味の域を超えている。食事中も散歩中も、カメラを触っているような感じ。登山から送ってくる写真は芸術的だ。

褒めすぎか。

というわけで、家族ならリラックスして撮れそう、と兄にお願いした。

どんな写真が撮れたかは、是非CDで♪ ⬅︎宣伝

村田理夏子公式サイトはこちら➡http://www.rikakomurata.com

CDができるまで~⑧デザイナー

CDの顔とも言えるデザイン。お菓子や本などでもそうだが、パッと見た印象は手に取っていただけるかに大きく関わるとても大切なものだと思う。

ここ数年、マネージメントを通して演奏会のチラシを担当してくださっているデザイナーさんがいる。毎回「こんなイメージで」と伝えると、私たちのイメージにピッタリとくるセンスの良いデザインを作ってくださる。

CD作成にあたり、ダメ元でマネージャーから依頼してもらうと、なんと!!CDを専門にデザインされているとか!

目下、デザイン作成中。みなさん、お楽しみに!

CDができるまで~⑦翻訳

そして、曲目解説は3ヶ国語。日、仏、英。日本語は私が頑張るとして、興味深い解説を英訳してくれる人が必要だ。パスカルは?と思われそうだが、彼も言うように、正式なものの翻訳は相当な能力が必要となる。

以前、ドイツの名音楽教師 クラウス ヘルビッヒ先生とお話する機会があった。彼はドイツ人だが、英語、フランス語、イタリア語などなど多言語を話す方だ。彼は英語がペラペラなのに、

こう言っていた。

ーそうだねぇ、一番難しい言語は英語かな。

私には意外だった。なんとなく、多くの人が話す英語は親しみやすい印象を持っていた。

話を聞いてみると、本当の意味で「正しく」話そうと思うと、英語は相当難しい、という。

確かに、なんとなく話すのと、文章にするのでは、日本語もかなり語彙やセンスが必要だ。

今回は、旧門下生だったAちゃんとイギリス人のご主人にお願いすることにした。2人とも音楽家なので、文章の意図もうまく読み取ってくれるはず。

こんな大仕事を引き受け、1ヶ月以上かけて見事に作ってくれた2人の温かさで、CDの第二の主役と言えるブックレットに命が宿ってきた。

特別公演ができるまで 「ファウスト交響曲ガイドツアー!」のその後

さて、特別公演に先立って開催する、3/16のプレイベント(カワイ表参道)まで、残すところ10日となりました。

今の様子はというと…皆さんにお配りする資料を作ったり、学校の課外事業みたいな気分で

楽譜を作成してみたりと、最後の追い込み中。

実際、当日のように進行してみて、あぁでもない、こうでもないと2人で調整中です。濃い内容を、2時間を使っていかにわかりやすくお伝えできるか、毎日数時間かけて頑張っています!

学生さんから、音楽愛好家の方、歴史が好きな方、そして音楽界の重鎮様まで様々な方が楽しみにしてくださっているご様子。少しでも多く良い時間を過ごしていただけるよう、最大限の準備で頑張ります!

私のサイトからのプレイベントのお申し込みは来週月曜までとさせていただきます。

この興味深いイベントにぜひお越しいただけたら嬉しいです。

公演の詳細はこちらから

https://www.rikakomurata.com/Rikako/Ticket2023

【4/6特別公演:音楽誌ショパン3月号(2月17日発売)にインタビュー掲載!】


4/6特別公演、それに先立つ3/16スペシャルプレイベント、そして私の初ソロCDの3本柱に関して、こちらの思いを見事にまとめてくださいました。ご覧いただけましたら幸いです。ファウスト交響曲、心を打ち抜かれる素晴らしすぎる作品です。プレイベントと合わせて是非、お聴き頂けますように。チケットはこちらから:

https://www.rikakomurata.com/Rikako/Ticket2023

CDができるまで~⑥ 曲目解説

今回の様に、特別公演で初のお目見えというCDリリース日がきっちりと決まっている場合、一切の遅れは許されない。録音を準備する傍ら、並行してブックレットの準備がはじまった。

ブックレット中心となる曲目解説。今回は、全曲フランス作品でもあり、パスカルにお願いした。引き受けてくれたものの、相当な時間をかけて調べたり、楽譜と睨めっこしながら考えたりしてくれ大変な思いをさせてしまった。

そうして出来上がった解説は、3作品、3作曲家をみごとに描き出してあり、本当に興味深い。デュティーユ夫妻と会ったこともあるパスカルによる秘話も?!このブックレット、ぜひ、手に取ってほしい。

⑤CDができるまで ~いよいよ録音

ひとことでいうと

人生で強烈に印象に残る3日間となった。こんなにも心身すり減る大変な作業とは。

「CD録音は取り直しができるから、コンサートより気楽かも」

なんていうのは大間違いで、比較できるものではないが、あまりの大変さに

コンサートの方がある意味マシかもしれない、とすら感じた。

パスカルにも、前からチラッと言われていたが、あまり身に染みてなかったことがある。それは

「CD録音では、いつでも、どこからでも、同じ状態で演奏できるようにしておく必要がある」

という言葉。

同じ状態、というのは、何回でも機械のように同じ演奏をできる、という意味ではない。毎回演奏は異なっていて良いが、「同じ種類のエネルギーを持って」途中からでも表現できないといけない。

「コンサートのように、本能とアドレナリンに委ねて弾けば良いというわけではないからね」

と言われていた。

録音しながら、役者さんのことが頭に浮かんだ。出来上がった映画を、私たちは、その世界に引き込まれて感動しながら見ている。一連の人生や、一連の出来事、恋愛など描くものは様々。

でもその背後で、実は何度も部分、部分をパズルピースのように撮り直しながら、「最高に嬉しい笑顔や、歯を食いしばるような苦しみ」など、役者さんは、その場で一瞬にしてその役、その気持ちに入り込んで撮っていたわけだ。

パスカルにそれを伝えると、

「そう、それがプロの技ということ」

だと。

それは感情表現に限らない。光のある音、神秘的な音、暗い音、深い音。

音質一つにしても、求められた時に、それまでと同じ集中度、同じエネルギーを瞬間的に集約して音作りに専念しないといけない。

つまり、2時間のリサイタルで集約するような強烈な集中とエネルギーを、録音では、撮るたび、つまり数分に一回燃やし続け、それを3日続けるわけだ。

2台ピアノでの録音ももちろん大変だったが、ソロ録音はまた別の孤独な戦いだった。

そんな必死の3日間は、孤独とはいっても、様々な方に支えてもらい、頭が上がらない。

録音技師さんは、とにかく私ができる限り自分のリズムでできるよう、何も口出しせず、録音機材を置いたバックステージで黙々と仕事をしてくださっていた。何を尋ねても「村田さんの好きなように」と答えてくださるのが印象的。演奏家の心理状態を知り尽くしているプロだと感じた。

調律師さん。録音以前から強い責任感で丁寧に楽器を準備してくださった上、当日も3日間つきっきり。楽屋裏でずっと待機して、隙間を見てはピアノの状態をチェックしたり、わがままな要望に合わせて、適時に調整してくださったり。楽器は自分の体の一部のように操るので、技術者さんの存在は欠かせない。

そしてアーティスティック ディレクターを務めてくれたパスカル。

「誰にとっても、初めてのソロのCD録音ってすごく大変なんだよ」と、

自分の初録音リリースの時の経験を活かして、絶妙かつ的確にコメントやアドヴァイスをくれた。しかも私の性格を知り尽くしているので(苦笑)、必要最小限、ここぞというタイミングでの口出しのみ。適時適所でいかに的確でありがたい方向修正をし続けてくれていたか、(ほぼ舵取り。笑) 後日のテイクを聴きながら、身に沁みる思いがした。

現在、編集作業中!

CDができるまで。本当にたくさんの方の支えがあるんです!まだまだブログは続きます。

CDは4月6日特別公演で初のお目見えをします!ぜひ公演へお越しください。詳しくは

こちらからwww.rikakomurata.com

特別公演のCDができるまで④ 〜分析は作曲家からの手紙

今回のCD録音に選んだデュティーユのピアノソナタ。以前から惹きつけられていて、いつか全楽章を勉強したいと思っていた作品だ。

実際練習してみると、何かが私の演奏に足りない。こんな演奏では惹きつけられるどころか、聴き手は迷子になってしまう。そんなときDがひとつの分析の書類を見つけてきてくれた。

英語…

翻訳ソフトでは意味不明になってしまったので、亀の歩みで訳し始めた。

すると、不思議な音が並んでいるように見える中に、ほんのちょっとした道標になる音やリズムが入っている。山の中で時折見つけるピンクのリボンのように。

数日かけて少しずつ訳していくうちに、楽譜が急に全く違うものに見え、演奏しながら耳で拾っていく音の世界がガラッと変わった。道筋を照らしてもらっているかのように、演奏が前進していく。

一気に曲の勢い、驚くほど曲の力が増した。

不思議な世界の中に、たった一つの音が今どこにいるか、次どこへ行こうとしているのかを示してくれている。たった一つのリズムが、全体をつないでいる。

分析は大切だよ、なんて言われつつ「宿題」のイメージがあった学生時代。実は道を示し、命を宿す、作曲家からの手紙を紐解いていくようなもの。

作曲家は気持ちに任せて、殴り書きしているわけではない。

「人生の苦悩、絶望が…」そんな安っぽいドラマのようなイマジネーションで天井を見ながら演奏したところで、名作は生かされない。

作曲家の細かな細かな作業の積み重ねを活かして初めて音楽に力を生み、人の心を揺さぶる。演奏する立場に立つ者は、作曲家の目を見張る偉業を緻密に拾い出し、組み立て、命を生んでいく使命がある。

録音まであと数日。ぎりぎりまで作曲家の意図したものに近づけるよう、歩んでみたい。

公演詳細はこちらから

https://www.rikakomurata.com

特別公演ができるまで 〜鳥肌….「ファウスト交響曲ガイドツアー!」

特別公演でファウスト交響曲を演奏することになり、Dが「聴く楽しみが増えるように、事前にプレイベントをしたい」と準備を始めて数ヶ月。

先程、おおむねの翻訳を終えたところだ。

「これは….」

と唸ってしまった。

へえ、なるほど、そういうことか…講座を聴き進めるうちに、いつのまにか

リストの作品の世界へ完全に取り込まれている。

リストが、巧みに音をあやつり、私たちを世界に引き摺り込んでいく様子を、

Dが見事に紐解いていく。

音から映像が目に浮かび、音で映画を見ていると言えば良いのだろうか。

ファウスト神話ってなんじゃ?

と、ちんぷんかんぷんな人でも大丈夫。丁寧にわかりやすく、話が紐解かれていく。不思議なことに、玄人も、ほぉ!発見を楽しめる。

そしてなによりも、講座の最後…。

最後の一文で、私は凍りついた。リストのこだわり、リストの技。

すごい作曲家。そしてすごい信念。鳥肌が、ゾワゾワっと立った。

なんとしてもご来場を検討していただきたい・・・そんなイベント。

演奏家を目指す学生さんは、この講座の後、楽譜へのアプローチの姿勢が180度変わるのではないだろうか。