レコード芸術特旋盤に選出された私の初ソロCD 「エスプリの旅」。CDを手に取ってくださる方のためにも、今回収録した曲について、私の意図を少し書いてみたい。
まず フランク。
前奏曲、フーガと変奏 というタイトルのこの作品は、初めて聴くという人も多いかもしれない。実は元はオルガン作品。信仰心が極めて強いフランクは、オルガン奏者として教会に浸り、ミサの後は即興演奏を披露していたとか。そこから生まれたのがこの作品だ。
私が演奏したのは、バウアーのピアノ編曲譜をもとに、オルガン譜と照らしあわせながら、いくつか私なりに変更や音を加えたりしたものだ。
一度聴けば、頭から離れないほど忘れがたい美しさで繰り返される、なんとも悲しげなフレーズが心に突き刺さる。
悲しい、本当に悲しいメロディ。
知られざる名曲という言葉がぴったりだ。
心にちくっと突き刺さる作品ながら、オルガン作品という宗教性の強いものがゆえ、どのように演奏すべきかかなり悩んだ。ロマンチックに盛り上がりたくなる場所もあるが、それでは何か違う気がする。美しい曲はどう弾いても美しいので、ロマンチックに情熱を盛り上げても綺麗な曲に聞こえる。でもそれではフランクの意図したものとは違う。美しい曲こそ、その曲に適格な様式を見つけるのが本当に難しい。
フランク作品全般的にキーワードとなるのが、
「甘ったるくならないこと」
フランク作品には、強い信仰心からくる、内に秘めた極めて強いエネルギーがある。
今回の作品は、淡々と同じフレーズが繰り返され、フーガを挟んだ後、変奏されてそれが戻ってくる。淡々と、かつ、内なる一貫した強い緊張感のあるアーチが生まれた時、この作品が心の奥へ届くと感じ、今回の収録に臨んだ。
1人で、しんみりと、何度も聴きたくなる。。。そんな思いを共有できたら何よりも嬉しい。
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