私のパートナー“以下D”の癖は、電話をし始めると、うろうろすることである。
もともと1点集中型(悪く言えば、二つ以上のことを一緒にできないだけである)の彼は、電話中はそのことにしか頭が行っていない。
先日も電話が鳴った。 “アロー”(フランス語のもしもし)といったとたん、例の調子で 歩き出した。彼は、しかも空間という空間を隅から隅まで使って歩くのである。
我が家の構造は、L字型になっており、玄関から一番奥の台所まで50歩は歩ける縦長ぁい作り。その縦長い廊下の途中に部屋がいくつかあり、居間やお風呂場などを入れると6箇所ぐらい部屋といえる空間がある。
Dはいつもどおり、電話が始まると、即座に椅子から立ち上がり、“アロー”の声でスイッチON!となったかのように、縦長い空間を歩きだした。時たまどこかの部屋に入り、ぐるぐるまわって、ひとしきり回ると次の部屋に移る。その間も、電話の内容もあるのだろうか、外国人だからであろうか、顔に、喜び、怒り、悩み、笑い、刻々と表情を刻々と変えて現れる。いつどこでくるくるまわっているか把握していないと、突然思わぬ部屋から、笑い声とともに、ぬーっと出てきたりして、こっちは うひょー (ノ゚⊿゚)ノ と驚くわけである。緊張感に耐えない生活だ。
その日は、私も忙しくコンピューターで仕事をしていて、くるくるその周りを回ったり、いなくなったりされると、にわかに腹が立ってきた。
そして、
―――よし!今日はDの行動範囲を少しずつ狭めてみよう。そうすればくるくる回らないかもしれない。!(^^)!
と思いついたのだった。
そして、相変わらずくるくるしながら電話しているDを追いかけ、(私も相当ひまである・・・)まず、玄関近くの扉をしめて、行動範囲を狭めてみた。
玄関のほうに近づいてきた彼は、扉がしまっていると、壁にぶつかったロボットのようにそこでUターンして、また回れる範囲に戻り、くるくるしはじめた。扉を開けてまで、玄関方面に行こうとはしないらしい。
こうなったら、意地である。少しずつ、扉を閉めてみた。Dにしてみると、向こうに行き、戻ってくるとさっきまで開いていた扉が閉まっているわけだが、そんなことには気がつかず、扉にぶつかるたびに、Uターン.
そして、とうとう
――――ふ、ふ、ふ、追い詰めた。(▼∀▼)ニヤリッ
台所に追い詰めてみた。(こうなったらすでに理科の実験のようである。)
すると、どうなるか。回るか、座るか、二つにひとつだ、Dよ。(もう、どうみても私のほうが怪しい状況である)
す・る・と・・・
まわったーーーぁぁぁぁぁぁ!
台所の狭―い範囲を、止まることも座ることもなく、ぐるぐるぐるぐるぐる・・・、難しい話をしているのか、眉間(みけん)にしわを寄せつつ回り続けたのであった。
これを見届けると、なぜか、私のいらいらは収まり、更には達成感に満ち(何のだ?)仕事に戻った。
そして、今日もDは回っている・・・