色 (1)

音楽でよく、もっと色を!と言われることがある。私も生徒によく使う言葉だが、「はい」と言って弾き直す生徒の演奏に色の変化が見られないことも多い。一番気になるのは、弾き直した後に変化していないことに気がつかないことだ。
生徒の頭の中で、音楽で言う「色」とは何なのか漠然としている気がしたので、尋ねてみた。
私:ねえ、音楽で言う色って何だろうね?
生徒:え?………(・_・;)  具体的な色ですか?
私:(質問の意味が良くわからず)それでも良いから言ってみて。
生徒:ここはオレンジ。
私:σ(^_^;) あは・・・・
私:でもさあ、オレンジと思っても聴いている人にオレンジって伝わらないよねえ。
生徒:うーん、じゃあ色とは感情のことですか?
私:というと?(お、近づいてきたぞ)
生徒:悲しいとか、嬉しいとか、暗いとか……
私:さっきのオレンジと一緒でイメージを持つことは素晴らしいんだけど、問題はそれを音で伝えることだよね。その感情はどうやって音で伝えるの?
生徒: ……(¨ )
生徒、ここで『地蔵化』である。
*地蔵化とは、村田用語で ”容量を超えて思考回路が止まってしまった状態” をいう。
もちろんイメージを持って目指すものを心に描くのは大事だけど、具体的な手段というものを探すこと、これが練習する時の楽しみでもあり、面白味でもあり、かつ必要なことだ。残念なことに音というものや響きの追求に本当の意味で時間をじっくりとかける生徒が少ないのはとても残念だ。心に訴えるのは音そのものなのに。
イメージを強く持った後、顔をしかめてみたり、身体をねじるように悶えて見たり、天を見上げて見たり……それはダメとは言わないが、そうすることで音になっていない表情をカバーしているつもりになってはいけない。
先日クラウス ヘルビッヒ先生の公開レッスンを拝聴した時、こんなことをおっしゃっていた。
「私たち演奏家はもちろん役者の要素も持っていないといけない。でもそれは音、つまり聴覚的な面での役者(つまり音で魅せる)であって、視覚的な効果はそんなにいらない」と。
続く
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