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カワイ表参道講座 ブラームス

ブラームスの醍醐味は、その磨き抜かれた曲作りに潜んでいる。本能に任せて、ロマンチックに…なんていう演奏では、本来の曲の魅力、格調、表情は生み出せない。

それこそ、「分析」という堅苦しい言葉が、実は音楽の魅力の秘訣だとわかったとき、曲を本当の意味で知る作業が尊いもの、そして面白く感じられる。

ブラームスをとりあげる第1回の今回は、そういったブラームス世界を覗き親しむヒントが散りばめられた講座になりそうだ。

パスカルが「前置き」と読んで話す冒頭のブラームスの若かりしころについての話は、実はここに全てが集約されているというぐらい、大切で興味深い話となりそう。そういうことか!という発見が山のようにある。

その後、ラプソディと作品118を通して、曲がどのように成り立っているか、どこに何が隠されているか、宝を引き出すように丁寧に丁寧に紐解いていくこの講座は、いわゆるここをこうやって練習して、といったものとは一味違い、今後ブラームス作品への見方がいっそう深くなり、面白くなり、練習するのも、指導するのも、聴くのも、全てが面白くなりそうだ。

興味深いマスタークラスです。是非ご参加ください!

クラシック界の裾野を広げるには、プロを目指す音大生だけではなく、音楽を愛し、好きでサークルに入るなど、喜び第一でピアノをやっている一般大学生達こそ大切なのではないか。そんな見事な視点を持つ岩倉孔介氏を中心とし、全国大学生ピアノ選手権が生まれた。

第1回から審査員として参加させていただき、これまで2回を審査しながら感じることがあった。それは「演奏への喜び」と「音楽への敬意」の良きバランスを見つけることの重要性だ。

我々演奏家は、聴衆あってこそ存在でき、作曲家があってこそ演奏できる。聴衆に音楽の良さを届けるには、音楽が好きで仕方がないという姿勢は非常に好感的で魅力的だけれど、それだけでは好き勝手な演奏になってしまい、作品の魅力を伝えきれないリスクも伴う。他人の作曲した作品を演奏し、公に披露する以上、それがプロであれ愛好家であれ、作品への責任も伴うと私は考えている。聴衆と作品の魅力を共有するとなると尚更だ。

そのために、こう言った一般大学生たちの楽しみを失わずに、適格な方向へ導くことが必要かもしれないと考えていた最中、岩倉氏から一般大学生を対象としたマスタークラスを立ち上げたいと伺った。

もともとピアノが好きで弾いている彼らだからこそ、最低限の作品、作曲家への知識はもちろん、自分の触れる楽器についても知り、その操り方もなどさまざまな方向から学ぶことで、よりピアノや音楽が面白くなるのではないか。

いつも的確な視点と幅広いアイディアを持つ岩倉氏には感服しつつ、互いにアイディアを交わしながら第一回のマスタークラス開催の運びとなった。

一般大学生を知るみなさん、どうかこの生まれたてのマスタークラスを広く周知してもらうお力をお借りできないでしょうか。必要があればチラシも送付できます。どうぞよろしくお願い申し上げます。詳細は下記リンクをクリック。

マスタークラスご案内

チラシのご用命は、送付先と合わせて下記までご連絡をお願いいたします。

村田理夏子

kurumiberlin@gmail.com

チラシです。詳細は下記より!

カワイ表参道の講座 この先の予定

いつのまにか20回!を迎えるこの講座シリーズ。私も訳しながら、どれだけ多くのことを学んでいるか。。。

午前ということもあり学生さんが少ないのが残念ですが、学生の皆さん、本当に今聞かないともったいないですよ!都合がつくなら絶対毎回聞くと良いと心から思います。

というわけで、新しいチラシができました。今後の予定です。

また一つ開いた扉

ベルリンに留学して4年目のこと。半年に一回はあったクラスの弾き合いの最中の強烈な思い出がある。それまで文字通り毎日毎日毎日毎日探し求めていた「指で鍵盤を操る」という意味が「あ、これかも!」と感じられた瞬間だった。

指が動く、弾ける、回るではなく、指から音を紡ぎ出すという芸術としてのテクニック。

ずっと探し求めていた扉が開いたかもしれない!と思った瞬間、がーーーん💦その扉の向こうに待ち受けていたのは、もっともっと多くの扉だった。

自分の要求レベル、耳のレベル、教養のレベルが1つ上がると、これまで見えていなかった扉が突然たくさん見えるようになったのだ。

5月28日のスペシャル公演は、私にとって多くのことを感じさせてくれた。50歳を過ぎ、明らかに自分の音楽、人生への捉え方が変わってのコンサートでもあった。そして日本に移り住んで7年。本当に多くの体験と葛藤があった。とても嬉しい出会いもあれば、尊敬していた人からの思わぬ発言に大きく失望したり…

明らかに昔とは違う音楽の世界の中で、私は自分の人生をどう進めたいのか、自分への確認を含めての公演だったとも言える。

扉を開けると、次に多くの扉が待っているという果てしない学びの人生の中で、私は学生時代から本番に満足したことは一度もない。うまく弾けた、と言ったことも一度もない。でもそれは、次に自分が向かうべき道がまだ途切れていない証だと勝手にポジティブに捉え☺️、毎回新たな勉強を始めてきた。

今回の公演に向かう練習の過程での宝物は、たった2分の小さな曲から、ダンテのような大曲まで、1つずつの曲をまさに「芸術作品」として見る、という当たり前のような言葉の本当の意味が見えた気がしたことだ。そういうことなのかもしれない…というこの感覚は私にとって大きな転機となったことは間違いない。これもまた、そのおかげで開いた扉があり、その向こうには…😅という果てしない瞬間でもある。

全てがわかった!と感じたときは音楽をやめるべきだと昔から生徒に言ってきたように課題が見えることはありがたいことだと思う。

今年から来年にかけて、ありがたいことに色々とコンサートやマスタークラスなどの機会がありそうで、それを通してパスカルと共に、納得いく音楽人生をまた1日ずつ重ねていきたい。

会場はこれまでで一番多くのお客様に恵まれ、その温かさ、そして驚くほどの集中度に、これまた勝手に🐣、ではあるが、多くの方と芸術を共有できた瞬間だったと感じている。東京は忙しい街で、人に溢れている。そんな中、会場に足を運んでくださることは私たちの人生に本当に大きなエネルギーとまたがんばろう!と思える喜びを贈ってくださっている。心から御礼を申し上げたい。

ラヴェル ソロピアノ作品全集リリースされました

1年間走り抜け、さまざまな調べ物をし、楽譜を見て悩み、考え….そうして最終的に私という媒体を介して今感じられるラヴェル作品を

ありのままに収録しました。年代順に収録できればという願いがかない、初期からラヴェルの人生を追うように2枚のCDが続きます。

変貌していくラヴェル、変わらないラヴェル、様々な方向からお楽しみ頂けましたら幸いです。

文字数が限られる中、少しでも興味深くお聴きいただけるようなヒントを散りばめた曲目解説も作成しました。合わせてご覧いただけましたら幸いです。

購入はこちらからできるようです

新CD 水平線への旅

高尚な美しさ

5/28の公演をスタートさせるのはブラームスのハイドンの主題による変奏曲。ハイドンの主題ではなく、実際はハイドンが用いていたコラールの主題なのだが、肝心なのはコラール。心の平穏、そして高尚な主題から、8つの変奏を経て終曲へ渡り、壮大に締め括られる。

2台ピアノでシンフォニー的な作品は多いが、実際演奏するとなるとシンフォニーとは違う難しさもある。特に、長い音をヴィブラートで持続させられないので、特に平穏かつ高尚なこう言った曲作りは難しい。下手にテンポを速くすれば平穏は失われ、だからといってオーケストラと同じようなテンポ感では場合によっては間延びしてしまう。

私たちはこう言った作品は、本当に時間をかけて試行錯誤して相当念入りに作り上げる。テンポ、強弱、バランス、音質、ペダル、いかにして作品の魅力を引き出せるか今も色々と試しながら準備を進めている。

それにしても美しい。はぁーとため息の出る作品。お楽しみに!

チケットはこちらから→5/28のチケット予約はこちらから

知ることは愛することにつながる?

この曲あまり好きじゃないな、なんて漠然とした感覚が学生の頃についてしまうことがある。それは「何だか弾いてもうまくいかない」「弾いてて面白くない」ということと無意識に結びついている気がする。

それは曲が原因なのだろうか?

何を目指すのか、中身がどうなってるのかよく考えもせず、なんとなく感じるままに歌ったりして弾いていたら、当然練習も目的が定まらず、目的があやふやに練習しても得られるものが少ない。そして練習がマンネリ化..その結果、なんかつまらないと感じる。

まさに悪循環だ。

4/24のカワイのレクチャーでは、パスカルが「ウイーンの謝肉祭の道化」をとりあげる。もっか翻訳中だが、信じられないぐらい面白い。私はなーんにもわかっていなかったのだと気がつくのと同時に、へー、あ、そうなんだ!えー!ということだらけで、レクチャーが進むにつれ、この曲もう一回やり直してみたいと感じさせられる。

この曲で出会う、たくさんの作曲家たち。あの人も、この人も。そしてそれらに出会いながら、大きな一つの建造物となっている作品。それを知って弾いたり、聴いたりするのと知らないのとでは、雲泥の差なことは明らか。

今回は指導者の方も、聴いてたのしむ方ももちろんのこと、専門家を目指す学生たちにもなんとしても聴いてもらいたい。

知ることが好きになることの始まり。逃すと本当にもったいないですよ!

CDの形がみえてきた

世の中は新年度スタート!と何かしら新しい始まりを迎える4月。とはいえ学校関係に勤めているわけでもない私にとって、4月は特に入学式などの区切りがあるわけでもなく、季節だけが桜と共に春を告げてくれる。

そんな私は現在、ひと月ほど前から5月末にお目見え予定の「ラヴェル・ピアノソロ作品全曲CD(2枚組)」の編集作業真っ只中。

数えきれないテイクを全てつぶさに聴きながら、イメージするものに最も近いものを拾い出していく作業は、莫大なエネルギーと時間を要する作業だ。CD2枚分となると、想像を超える大変さ💦

忙しい中、ディレクターとして、相当な時間を割いて共にその作業をしてくれているパスカルには頭が上がらない。

そのおかげで少しずつ形が見えてきた。そして「これ、本当にいいCDになりそうだ」とつい先日パスカルがつぶやいとき、涙が出そうになった。

限られた時間で相当なスピード感で制作を進めてくださるレグルス社の吉岡さんにも感謝が耐えない。平行してセンス抜群のデザイナーの協力で、CDデザインも着々と進めていく。

このCDで私が試みたことは、

「ラヴェルの様々な側面を、作品を通して“私なりの解釈で明確に“表現すること」

パスカルにも

「自分の解釈をしっかりともち、楽譜や文献からラヴェルが求めたであろうものをできる限り想像して引き出し、ある程度のリスクを負う覚悟で思い切ってそれを表現しなければCDを出す意味がない」

と常々言われてきた。

最大限に調べ、考え、想像し、ピアノという楽器から紡ぎ出せるだけの表情を求めて、指先、感性、耳、全てを鋭敏にして試した結果行き着いた今回のCD。今の私にできることは全て尽くした印象だ。

5月28日、私たちの結婚20周年への思いを重ねての大切なコンサートを迎える。そこで初めてお目見えするこのCDも、是非楽しみにしていただきたい。

5月の公演についても近々ブログで取り上げたいと思っている。お楽しみに!

地方公演伺います!

先日の日経ホール公演。いまだに嬉しい声が届き続けています。

この公演はウェストサイドストーリーやドビュッシーへの反響が特に大きく、本当に嬉しい驚きです。このプログラムで地方へも来てほしい!という声もあり、私たちもせっかくのプログラムを是非皆さんにお届けできたら嬉しいので、ご希望があれば是非伺いたいと話しています。

というわけで、もしこのプログラムを是非聴きたいという主催者さんがありましたらご連絡ください。是非検討させていただきます!

日経のチラシ貼っておきますね。こんなプログラムでした。軽微な変更ももちろんできます。お客様が満面の笑みで会場を後にされる、最高のプログラムです。ー

ご連絡お待ちしています!

ご連絡は kurumiberlin@gmail.com まで!

公演後!

原点に帰る喜び

3/7の日経ミューズ公演ピアノデュオは、大勢のお客様にお越しいただき、素晴らしい時間となりました。

公演終了後のフォワイエで、お客様が次々と満面の笑みで興奮気味に話しかけてくださる。「ウェストサイドストーリーは僕の青春なんです!」「元気になりました!」「ドビュッシー最高!」「私も頑張ってみようと思います!!」

それぞれの言葉を投げかけてくれるその顔は、皆それぞれエネルギーや幸せに満ちて、何か生き生きと輝いていた。

コンサートは曲が主役。お客様がそれぞれの思いで自分なりに何かを感じ取り、音楽の素晴らしさを再認識し何かに満たされて会場を後にする。それが私が思い描く理想で、今回はまさにそれに近いものが生まれた気がする。

そして何よりも、私たちがそのみなさんの様子から、1番の幸せを受け止らせていただいている。

なんだか原点に帰らせてもらえる公演だった。

忘れてはいけないのは、主催の日経新聞とスポンサーのファンケルの存在。今の時代クラシック公演を500回を超えて主宰をし続けてくれる会社は貴重な存在だ。そしてそれを支え続けるファンケル。細やかな心配りで私たちが演奏を楽しめるようにサポートくださり、心からお礼を申し上げたい。

さ、次は我々のメイン公演ともなる、スペシャル公演。

5/28上野の東京文化会館。みなさん、どうか是非ご来場ください!