来年の公演ご案内~私を突き動かしたもの

全ての「当たり前」が覆されてもう1年以上が過ぎる。1つのコンサートに向けて演奏家は数ヶ月かけて技術や気持ちを高めていくわけだが、その途中で、「中止となりました」「延期となりました」が続く。ドミノ倒しのように、準備しては崩れていく先の予定というのは、私のモチベーションをここまでむしばむとは思っていなかった。

また本番がなくなるかもしれない、となると、エンジンが空回りしてなかなか集中がもたない。

数ヶ月かけて気持ちの持って行き方をコントロールしながら、たった一瞬の日のために最大に高める作業は、実はものすごいエネルギーだったと気がつかされた。

2020年に予定していた公演「命」。延期や様子見を繰り返すうち、一度白紙に戻すことにした。

気持ちがもたないからだ。

もぬけのからのようになって、真っ白になったカレンダーを横目に過ごす。時間ができたのだから、何か自分らしいことを見つけて始めたいのに、どうせ何かやっても。。。という思いで、モチベーションが全く上がらない自分と戦うこと数ヶ月。相変わらずだらだら、ごろごろと家で過ごす私は、ある日Devoyonに「奏法について、動画を出したら?」と言われた。思いもよらない提案に「なんで?」と聞くと、「君らしさが出せると思う」という。

それからというもの、きちんとした内容で続けられるかどうかを見極めるために、様々なアイディアを考えメモを始めた。頭を使うことは嫌いではない。何か冬眠から目を覚ました動物のように、じっくりじっくり考えアイディアをメモしていった。

考えてみれば、立ち止まり、じっくり自分や楽器と向き合い、根本を考えるということがあまりなかったように感じる。時間に追われず、じっくり考える作業は、実は誰のためでもなく、私にとって、これからの自分の音楽や教育活動に向かうための貴重な時間となった。Dには感謝してもしきれない。

週1回で出す作業は相当を絶する仕事だ。アイディアが続く限り、あと数ヶ月ぐらい続けようと思うが、この先はまた自分の演奏会への準備やレッスン活動へと移行しようと思っている。

そんな見つめ直す時期を経て、来年演奏会をすることを決意した。2022年5月18日 東京文化会館。いつもどおり、Devoyonとさまざまな案を練り、内容濃く、いかにも私たちらしい内容にしたいと思っている。

詳細はまたご案内させていただくが、2018年のオールラヴェル公演から、「4年」を経た私たちの公演を是非楽しみにしていただけたら嬉しい。