つまり、インテンポとは、必要な音楽的効果に基づいて伸縮、緩急を繰り返しながら、歩み続ける脈拍のようなもの。その歩みは、呼吸をする肺のように、伸縮はしても、決してぎくしゃくすることはない。
もう一度繰り返すと、 いかに自然になるか、ということを求めて探すのが一番良いのではないだろうか。
そのために、どんな練習ができるかについて考えてみた。
まず、
●メトロノームを使用する場合。
前回の例で、同じ3秒のなかで、間の取り方によって表情が違う、という話をした。そう、同じ3秒というような、ある程度の“枠(わく)”は音楽で非常に大切だ。枠(わく)を無視して、好きなように時間をとってしまうと、テンポも何もない、ということになる。だから、“IN” テンポ、という表現なのかもしれない。
ただ、その枠を小さくとってしまうと、動きようがない。お経のように次々襲ってくるメトロノームの”カチ””カチ“に追われてしまう。
昔、私は何もわからず、メトロノームを鳴らしっぱなしで練習していた。今考えれば、いろいろなところで音楽的な理由から無意識に多少の時間がかかって当然なのに、メトロノームの合図に何としても納めなければいけないと思っていた。いくらがんばっても、カチカチとまくし立てるメトロノームの出すテンポに収まらず、いらいらして、何度機械を投げ飛ばそうとしたことだろうか・・(#^.^#)
というわけで、メトロノームを投げ飛ばさないためにも(違)、メトロノームを使う場合には、大きなふり幅で音を鳴らすようにすると良いだろう。たとえば、エリーゼのために、などであれば1小節単位などで良いだろう。つまり、一小節に一回”カチ“となる程度。先ほどの3秒の話と同じように、その中をどう使うかは演奏者の自由だ。モーツァルトのソナタなんかを想像しても、1小節1回ぐらい鳴らすので良いだろう。
そういう使い方のメトロノームなら、とても良いと思う。
もう一つ、メトロノームのとても良い使い方は、“比較”をする使い方。きれいなところを一生懸命歌って弾いているうちに、テンポがどんどん遅くなったりすることはよくある。でも人間ってすぐに慣れてしまうので、それに気が付かない。だから、ある部分を練習したら、そこをどれぐらいのメトロノームで弾いているか調べて、曲の冒頭など、どこか違うところに戻ってそのメトロノームを鳴らしてみる。そしてテンポがかけ離れていないか調べるわけだ。
ほら、自分では変わってないつもりでも、いつの間にか太ってたりするでしょう・・メトロノームと同じように、体重計で比較してみて、びっくり・・みたいな。指標があるというのはある程度大切だと思う。(説得力あるのかな、この例って・・・汗)
今度は
●メトロノームなしでの練習方法について。
メトロノームなしでも、脈拍の練習はできると思う。むしろ、もっと自然な練習方法かもしれない。それは、自分で歩きながら歌うこと。歩くことで自然な脈のベースを作り、歌いながら、多少時間をかけたいと感じた個所があれば、その部分で足の歩みを少しだけゆったり目にとるわけだ。でも、決して歩みがぎこちなくなったり、止まってはいけない。また、少し緊迫感を作りたいときは、少し早めに歩き、また先ほどの歩みに戻す。
決して軍隊のように歩くのではなく、ふわ、ふわっと柔軟に踊るように歩きながら、どういう歩みをしたら自分が自然に歌えるか探すわけだ。この方がさらに柔軟なテンポの枠づくりをするのに良いと思う。
インテンポ。たったの5文字ですが、奥が深いですね・・・。
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