ひとことでいうと
人生で強烈に印象に残る3日間となった。こんなにも心身すり減る大変な作業とは。
「CD録音は取り直しができるから、コンサートより気楽かも」
なんていうのは大間違いで、比較できるものではないが、あまりの大変さに
コンサートの方がある意味マシかもしれない、とすら感じた。
パスカルにも、前からチラッと言われていたが、あまり身に染みてなかったことがある。それは
「CD録音では、いつでも、どこからでも、同じ状態で演奏できるようにしておく必要がある」
という言葉。
同じ状態、というのは、何回でも機械のように同じ演奏をできる、という意味ではない。毎回演奏は異なっていて良いが、「同じ種類のエネルギーを持って」途中からでも表現できないといけない。
「コンサートのように、本能とアドレナリンに委ねて弾けば良いというわけではないからね」
と言われていた。
録音しながら、役者さんのことが頭に浮かんだ。出来上がった映画を、私たちは、その世界に引き込まれて感動しながら見ている。一連の人生や、一連の出来事、恋愛など描くものは様々。
でもその背後で、実は何度も部分、部分をパズルピースのように撮り直しながら、「最高に嬉しい笑顔や、歯を食いしばるような苦しみ」など、役者さんは、その場で一瞬にしてその役、その気持ちに入り込んで撮っていたわけだ。
パスカルにそれを伝えると、
「そう、それがプロの技ということ」
だと。
それは感情表現に限らない。光のある音、神秘的な音、暗い音、深い音。
音質一つにしても、求められた時に、それまでと同じ集中度、同じエネルギーを瞬間的に集約して音作りに専念しないといけない。
つまり、2時間のリサイタルで集約するような強烈な集中とエネルギーを、録音では、撮るたび、つまり数分に一回燃やし続け、それを3日続けるわけだ。
2台ピアノでの録音ももちろん大変だったが、ソロ録音はまた別の孤独な戦いだった。
そんな必死の3日間は、孤独とはいっても、様々な方に支えてもらい、頭が上がらない。
録音技師さんは、とにかく私ができる限り自分のリズムでできるよう、何も口出しせず、録音機材を置いたバックステージで黙々と仕事をしてくださっていた。何を尋ねても「村田さんの好きなように」と答えてくださるのが印象的。演奏家の心理状態を知り尽くしているプロだと感じた。
調律師さん。録音以前から強い責任感で丁寧に楽器を準備してくださった上、当日も3日間つきっきり。楽屋裏でずっと待機して、隙間を見てはピアノの状態をチェックしたり、わがままな要望に合わせて、適時に調整してくださったり。楽器は自分の体の一部のように操るので、技術者さんの存在は欠かせない。
そしてアーティスティック ディレクターを務めてくれたパスカル。
「誰にとっても、初めてのソロのCD録音ってすごく大変なんだよ」と、
自分の初録音リリースの時の経験を活かして、絶妙かつ的確にコメントやアドヴァイスをくれた。しかも私の性格を知り尽くしているので(苦笑)、必要最小限、ここぞというタイミングでの口出しのみ。適時適所でいかに的確でありがたい方向修正をし続けてくれていたか、(ほぼ舵取り。笑) 後日のテイクを聴きながら、身に沁みる思いがした。
現在、編集作業中!
CDができるまで。本当にたくさんの方の支えがあるんです!まだまだブログは続きます。
CDは4月6日特別公演で初のお目見えをします!ぜひ公演へお越しください。詳しくは
こちらからwww.rikakomurata.com