脱力について (1)

ピアノを演奏する際の”脱力”は永遠の課題ではないかと感じるほど、伝えるのも、理解してもらうのも難しい。ひとことで要約すると、脱力とは、”必要のない”緊張をほどくことだ。つまり必要のある緊張は残しておかないといけない。でも、必要な緊張って何?
ここが難しい・・・(´・ω・`)
歩くことでたとえてみよう。例えば足。足首が本当に脱力していると足はどうなるか。そう、ぬいぐるみの足のように、だらっとぶら下がる。これでは歩けない。つまり
足首が足を支えていないと歩けない。
ピアノも同じで、手首は手を支えていなければならない。そうでないとぶらっと落ちるので、指は完全にティッシュペーパーのようになってしまい、使い物にならない。結構このティッシュペーパーフィンガーで何とか弾いてやれ、と育ってきてしまった人が多く、そうなると
音を鳴らすために、腕や肘を押し込んだり、前かがみになったり、と労力は大きいが音が鳴らない、という非常に疲れるピアノの演奏法を覚えてしまう。そしていくらがんばっても、周りから大きいホールで印象が薄い、とか音が届かない、と言われてしまうのだ。
ピアノは打って鳴らす楽器だ。ティッシュペーパーフィンガーでは鍵盤に速度を送り込めない。速度が送り込めないと、ハンマーが音を飛ばしてくれない。腕で押し込んでも、速度はあがらないのだ。だから、腕をいくら押し込んでも音が実は遠くに飛んでいかず、自分の前で音が鳴っているようなのに、遠くに通らない。
ピアノを弾く際の手首の大きな役割の一つは、手を支えることなのだ。脱力しなければと、手首をふらふらさせようとするのは、正反対の結果を生んでしまう。手首は実は、たえず仕事をしている。
そして、もうひとつ、ピアニストに不可欠なのに、かなりないがしろにされているものがある。(続く)