From 札幌!

一年以上前から計画し、地道に準備を進めてきた、DとのピアノDUOリサイタルツアー。
11月2日の藤沢公演を皮切りに、つい先日2公演目となる札幌公演も大成功のうちに終えることができた。今回のツアーにあたっては、本当に数限りない方々のお力によって成し遂げられていることを心から感じ直し、感謝しても感謝しても足りないぐらいありがたい、そして温かい気持ちにさせていただいている毎日。お一人お一人が私たちのために、本当に親身になって協力をしてくださる。自分もこういう人間でありたいと、つくづく感じている日々である。
私にとって、今回初めてになることがたくさんある。その中のひとつであり、大きな課題は一か月の間に6回の演奏会をするという経験だ。しかも6回目の東京公演はプログラムが一部違って来る。6回も演奏させていただけるということは、次第に落ち着くのではないかと思っていたが、そう簡単ではない気がする。実際のところ、まず集中力の持続という点で、非常に難しい。
各地での演奏会の翌日は、すべて公開レッスンが予定されている。演奏会の興奮と疲労がやまないまま、Dはレッスン私は通訳。確実に疲れがたまっていくのが感じられる。その一方で、ひとつの演奏会をこなすたびに、新しいアイディアが浮かび、次の演奏会ではこういう演奏を心掛けたい・・・という欲望も高くなってくる。そうなると、次の演奏会が本当に楽しみになってくる。
これからの体力配分そして集中力の高め方が、本当に大切な課題だと感じている。
がんばるぞ。
今回の演奏会へは実は特別な思いがある。ほぼ10年前の今頃、私にとって日本で初めての大きなリサイタル、つまりデビューリサイタルを東京でさせていただいた。なんて皮肉なんだろう。その日、まさにその日の演奏会直後、私が世の中で一番愛している人のひとりであるあの人が、空の世界へと旅立ってしまった。あの人は旅立ちが近いことなど、私には一つも告げず、ただ、今日は体調が悪いからと演奏会には来なかった。そして演奏会が終わったその数時間後、私の目の前で突然旅立ってしまった。25歳だった私には、すべてを受け入れることが難しく、世の中がひっくり返ってしまったようで、あまりの驚きにひと粒の涙も出ず、
まるでドラマみたい・・・。うそでしょ・・・。
そう思ったのを今も覚えている。
あれから10年、その時の心の痛みと張り裂けそうな苦しみは、今でも癒えていない。時間が解決するなんて全くの嘘だ。今だって思い出せば胸が張り裂け、破れそうになるほど苦しい。
10年後の今、また東京を含む6か所での演奏会をさせていただいている。今度こそ聴きに来てくれてるかな。
なにも欲張ったことは望まない。ただ、演奏を,いや、ひとつひとつの音を通して、彼女にどうしても伝えたいことがある。それは直接言うことができなかった一言:
音楽という道を歩ませてくれて、ありがとう。今、私は本当に幸せだよ
と。