「音楽」カテゴリーアーカイブ
CDができるまで~⑦翻訳
そして、曲目解説は3ヶ国語。日、仏、英。日本語は私が頑張るとして、興味深い解説を英訳してくれる人が必要だ。パスカルは?と思われそうだが、彼も言うように、正式なものの翻訳は相当な能力が必要となる。
以前、ドイツの名音楽教師 クラウス ヘルビッヒ先生とお話する機会があった。彼はドイツ人だが、英語、フランス語、イタリア語などなど多言語を話す方だ。彼は英語がペラペラなのに、
こう言っていた。
ーそうだねぇ、一番難しい言語は英語かな。
私には意外だった。なんとなく、多くの人が話す英語は親しみやすい印象を持っていた。
話を聞いてみると、本当の意味で「正しく」話そうと思うと、英語は相当難しい、という。
確かに、なんとなく話すのと、文章にするのでは、日本語もかなり語彙やセンスが必要だ。
今回は、旧門下生だったAちゃんとイギリス人のご主人にお願いすることにした。2人とも音楽家なので、文章の意図もうまく読み取ってくれるはず。
こんな大仕事を引き受け、1ヶ月以上かけて見事に作ってくれた2人の温かさで、CDの第二の主役と言えるブックレットに命が宿ってきた。
特別公演ができるまで 「ファウスト交響曲ガイドツアー!」のその後
さて、特別公演に先立って開催する、3/16のプレイベント(カワイ表参道)まで、残すところ10日となりました。
今の様子はというと…皆さんにお配りする資料を作ったり、学校の課外事業みたいな気分で
楽譜を作成してみたりと、最後の追い込み中。
実際、当日のように進行してみて、あぁでもない、こうでもないと2人で調整中です。濃い内容を、2時間を使っていかにわかりやすくお伝えできるか、毎日数時間かけて頑張っています!
学生さんから、音楽愛好家の方、歴史が好きな方、そして音楽界の重鎮様まで様々な方が楽しみにしてくださっているご様子。少しでも多く良い時間を過ごしていただけるよう、最大限の準備で頑張ります!
私のサイトからのプレイベントのお申し込みは来週月曜までとさせていただきます。
この興味深いイベントにぜひお越しいただけたら嬉しいです。
公演の詳細はこちらから
https://www.rikakomurata.com/Rikako/Ticket2023
【4/6特別公演:音楽誌ショパン3月号(2月17日発売)にインタビュー掲載!】
4/6特別公演、それに先立つ3/16スペシャルプレイベント、そして私の初ソロCDの3本柱に関して、こちらの思いを見事にまとめてくださいました。ご覧いただけましたら幸いです。ファウスト交響曲、心を打ち抜かれる素晴らしすぎる作品です。プレイベントと合わせて是非、お聴き頂けますように。チケットはこちらから:
CDができるまで~⑥ 曲目解説
今回の様に、特別公演で初のお目見えというCDリリース日がきっちりと決まっている場合、一切の遅れは許されない。録音を準備する傍ら、並行してブックレットの準備がはじまった。
ブックレット中心となる曲目解説。今回は、全曲フランス作品でもあり、パスカルにお願いした。引き受けてくれたものの、相当な時間をかけて調べたり、楽譜と睨めっこしながら考えたりしてくれ大変な思いをさせてしまった。
そうして出来上がった解説は、3作品、3作曲家をみごとに描き出してあり、本当に興味深い。デュティーユ夫妻と会ったこともあるパスカルによる秘話も?!このブックレット、ぜひ、手に取ってほしい。
⑤CDができるまで ~いよいよ録音
ひとことでいうと
人生で強烈に印象に残る3日間となった。こんなにも心身すり減る大変な作業とは。
「CD録音は取り直しができるから、コンサートより気楽かも」
なんていうのは大間違いで、比較できるものではないが、あまりの大変さに
コンサートの方がある意味マシかもしれない、とすら感じた。
パスカルにも、前からチラッと言われていたが、あまり身に染みてなかったことがある。それは
「CD録音では、いつでも、どこからでも、同じ状態で演奏できるようにしておく必要がある」
という言葉。
同じ状態、というのは、何回でも機械のように同じ演奏をできる、という意味ではない。毎回演奏は異なっていて良いが、「同じ種類のエネルギーを持って」途中からでも表現できないといけない。
「コンサートのように、本能とアドレナリンに委ねて弾けば良いというわけではないからね」
と言われていた。
録音しながら、役者さんのことが頭に浮かんだ。出来上がった映画を、私たちは、その世界に引き込まれて感動しながら見ている。一連の人生や、一連の出来事、恋愛など描くものは様々。
でもその背後で、実は何度も部分、部分をパズルピースのように撮り直しながら、「最高に嬉しい笑顔や、歯を食いしばるような苦しみ」など、役者さんは、その場で一瞬にしてその役、その気持ちに入り込んで撮っていたわけだ。
パスカルにそれを伝えると、
「そう、それがプロの技ということ」
だと。
それは感情表現に限らない。光のある音、神秘的な音、暗い音、深い音。
音質一つにしても、求められた時に、それまでと同じ集中度、同じエネルギーを瞬間的に集約して音作りに専念しないといけない。
つまり、2時間のリサイタルで集約するような強烈な集中とエネルギーを、録音では、撮るたび、つまり数分に一回燃やし続け、それを3日続けるわけだ。
2台ピアノでの録音ももちろん大変だったが、ソロ録音はまた別の孤独な戦いだった。
そんな必死の3日間は、孤独とはいっても、様々な方に支えてもらい、頭が上がらない。
録音技師さんは、とにかく私ができる限り自分のリズムでできるよう、何も口出しせず、録音機材を置いたバックステージで黙々と仕事をしてくださっていた。何を尋ねても「村田さんの好きなように」と答えてくださるのが印象的。演奏家の心理状態を知り尽くしているプロだと感じた。
調律師さん。録音以前から強い責任感で丁寧に楽器を準備してくださった上、当日も3日間つきっきり。楽屋裏でずっと待機して、隙間を見てはピアノの状態をチェックしたり、わがままな要望に合わせて、適時に調整してくださったり。楽器は自分の体の一部のように操るので、技術者さんの存在は欠かせない。
そしてアーティスティック ディレクターを務めてくれたパスカル。
「誰にとっても、初めてのソロのCD録音ってすごく大変なんだよ」と、
自分の初録音リリースの時の経験を活かして、絶妙かつ的確にコメントやアドヴァイスをくれた。しかも私の性格を知り尽くしているので(苦笑)、必要最小限、ここぞというタイミングでの口出しのみ。適時適所でいかに的確でありがたい方向修正をし続けてくれていたか、(ほぼ舵取り。笑) 後日のテイクを聴きながら、身に沁みる思いがした。
現在、編集作業中!
CDができるまで。本当にたくさんの方の支えがあるんです!まだまだブログは続きます。
CDは4月6日特別公演で初のお目見えをします!ぜひ公演へお越しください。詳しくは
こちらからwww.rikakomurata.com
特別公演のCDができるまで④ 〜分析は作曲家からの手紙
今回のCD録音に選んだデュティーユのピアノソナタ。以前から惹きつけられていて、いつか全楽章を勉強したいと思っていた作品だ。
実際練習してみると、何かが私の演奏に足りない。こんな演奏では惹きつけられるどころか、聴き手は迷子になってしまう。そんなときDがひとつの分析の書類を見つけてきてくれた。
英語…
翻訳ソフトでは意味不明になってしまったので、亀の歩みで訳し始めた。
すると、不思議な音が並んでいるように見える中に、ほんのちょっとした道標になる音やリズムが入っている。山の中で時折見つけるピンクのリボンのように。
数日かけて少しずつ訳していくうちに、楽譜が急に全く違うものに見え、演奏しながら耳で拾っていく音の世界がガラッと変わった。道筋を照らしてもらっているかのように、演奏が前進していく。
一気に曲の勢い、驚くほど曲の力が増した。
不思議な世界の中に、たった一つの音が今どこにいるか、次どこへ行こうとしているのかを示してくれている。たった一つのリズムが、全体をつないでいる。
分析は大切だよ、なんて言われつつ「宿題」のイメージがあった学生時代。実は道を示し、命を宿す、作曲家からの手紙を紐解いていくようなもの。
作曲家は気持ちに任せて、殴り書きしているわけではない。
「人生の苦悩、絶望が…」そんな安っぽいドラマのようなイマジネーションで天井を見ながら演奏したところで、名作は生かされない。
作曲家の細かな細かな作業の積み重ねを活かして初めて音楽に力を生み、人の心を揺さぶる。演奏する立場に立つ者は、作曲家の目を見張る偉業を緻密に拾い出し、組み立て、命を生んでいく使命がある。
録音まであと数日。ぎりぎりまで作曲家の意図したものに近づけるよう、歩んでみたい。
公演詳細はこちらから
特別公演ができるまで 〜鳥肌….「ファウスト交響曲ガイドツアー!」
特別公演でファウスト交響曲を演奏することになり、Dが「聴く楽しみが増えるように、事前にプレイベントをしたい」と準備を始めて数ヶ月。
先程、おおむねの翻訳を終えたところだ。
「これは….」
と唸ってしまった。
へえ、なるほど、そういうことか…講座を聴き進めるうちに、いつのまにか
リストの作品の世界へ完全に取り込まれている。
リストが、巧みに音をあやつり、私たちを世界に引き摺り込んでいく様子を、
Dが見事に紐解いていく。
音から映像が目に浮かび、音で映画を見ていると言えば良いのだろうか。
ファウスト神話ってなんじゃ?
と、ちんぷんかんぷんな人でも大丈夫。丁寧にわかりやすく、話が紐解かれていく。不思議なことに、玄人も、ほぉ!発見を楽しめる。
そしてなによりも、講座の最後…。
最後の一文で、私は凍りついた。リストのこだわり、リストの技。
すごい作曲家。そしてすごい信念。鳥肌が、ゾワゾワっと立った。
なんとしてもご来場を検討していただきたい・・・そんなイベント。
演奏家を目指す学生さんは、この講座の後、楽譜へのアプローチの姿勢が180度変わるのではないだろうか。
CDができるまで:その③2大ショック!
あけましておめでとうございます!まもなくの録音を控えているので、あまりお正月気分なく過ごしておりますが、本年もよろしくお願いいたします!
そんな前回の打ち合わせでは、「はぁ~時代は流れているのねえ」と感じさせられるびっくりがいくつかありました。
録音では余計な音が入らないように空調を止めて行います。でも録音は1月。いくらホールを事前に暖めても、寒くなることも考えられます。録音技師さんはそういうことにも細かに気づいてくださる。
録音技師さん: まぁ、寒くなったらホールの照明をつけて会場を暖かくしたりしますよー。
私:なるほどーー
と感心していたら
舞台責任者が間髪入れずひとこと、
「あ、それは無理ですよー。今はLEDなんで。
あったまりませんよ。電球触っても熱くない」
私と録音技師 …… (・∀・) そーなんだ…?!
録音技師: はー。参りましたねえ。時代はなんともいつのまにか近代化されているんですねぇ。(^_^;)
私: LEDは熱くないの?じゃあ、ろうそくとか。(⬅︎どんだけ昭和人)
と、LEDショックで会場を後にした私たち。
打ち合わせでもう一点、録音技師が心配していたことがある。それは冬の楽器状態。
前回のブログで書いたように、今回は楽器を外部から持ち込んで録音するのだが、肝心の楽器は録音開始の数時間前にトラックで運送される。ピアノが冷たい状態でホールに入るので、
気温差でピアノが変化しやすいのではないかと心配されていた。そして、
「料理みたいに温めながら楽器を運べたらねえ、ワハハ!」
なんて私と冗談を交わしていた。
ちょうどこの数日後、録音を担当する調律師さんと会う機会があったので、この案件を尋ねてみた。
すると…
調律師: あー、大丈夫です。今の運送トラックは空調がついてるんですよ♪
(・∀・) ま.さ.か….
完全に時代のスピードに取り残されてますね、私。。。
ブラボー昭和…
……
チーン (*_*)
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特別公演:CDができるまで ②大切なパートナー録音技師
初ソロCDをリリースするのは、これまでパスカルと3枚のCDを録音していただいたレグルスさん。初2台ピアノのCDからかれこれ…
15年!ぎゃー(°▽°)
長年のお付き合いで絶大な信頼を置けるのは、ただでさえナーヴァスになる録音の際には、
かけがえのない安心につながる。ありがたや。。
そんな録音技師さんが、今回の録音会場を下見したいとおっしゃり、一緒に訪問してきました。
ホールの舞台関係責任者も同席しての打ち合わせ。
各方面のプロはすごい!録音技師さんの鋭い視点とこだわりで、私なら見逃しそうな細かなチェックと質問が飛ぶ。そして舞台責任者の方もプロ!明確かつ即座に答えをくれる。
その様子を見ながら、改めて多くの方に支えてもらってCDというものが生まれるんだと痛感。
控室で念入りな打ち合わせ後、ホールへ移動。
録音技師さんは、舞台の床の硬さ、響きを念入りにチェック。良いホールだと感心しながら、
同時に、配線、音響、空調、録音に使う部屋の騒音状況など細かく細かく質問を重ねる。
録音技師: あのぅ、マイクのためにどこか一つ差込を貸してもらえるとありがたいのですが、このどれか1つでも…
と指差す舞台袖の機械。
ひゃー。流しそうめんですか?ってぐらい、たくさんの線が垂れ下がって、私はちんぷんかんぷん。
かれこれ1時間の打ち合わせ。驚きと感心ばかりの私だったが、録音技師さんも「これで安心です!」とご満悦。よかった!
特別公演の詳細は下記をご覧ください
https://www.rikakomurata.com