画用紙からはみ出したクレヨンの絵、きれいに書かれた鉛筆の下書き

レッスンってなんだろう。
私の役割ってなんだろう。そんなことをふと考える時期がある。
私が、レッスンで生徒さんから持ってきてもらいたいものは、もしこの2つの絵に例えると、どちらだろうか。
1)画用紙にきれいに描かれた下書きの絵。
それとも、
2)勢いあまって、画用紙からはみ出してしまっている、クレヨンの絵。
それは、 2)である。
でも実際は、きちんと整えられた下書きの絵を持ってきて、・・これにきれいに色をつけてください・・・とばかりに、レッスンで遠慮がちに弾いてくれる人が意外と多い。もちろん、それはそれで、色をつければ、絵になるだろう。
でも、それは”私”の絵でしかない。
私が欲しいのは生徒さん自身から出てくる絵。はみ出していても良い、斬新でも良い。整っていなくても良い。
伝えたい何かさえあれば。
もちろん、何を書いても良いというわけではない。音楽には、作曲家という生みの親がいる。私たちは演奏家の使命は、作曲家が紙の上に残した音に、命を吹き込むこと。
だから、好きなことをして良いというわけではない。生みの親が、”家“をテーマとしていたら、それは家でなければいけない。木の家なら木の家でなければいけない。でも、それさえ守っていれば、そこから、私たちの想像力をたくさん取り交ぜることができるのだ。
どんな大きさの家? どんな形?
丘の上にある? 森の中にある? それとも、都会?
お昼の家の様子? それとも夜? 
その家には、誰か住んでるの? 
・・・それは、私たちが想像をふくらませて良い場所なのだ。それこそが、個性。
個性、というものを“好きなように演奏して良い”・・と勘違いしている場合もある。でも、それは違う。家は家でなければいけない。つまり、楽譜に書いてあることには、忠実にならなければいけない。
その上で、自分で精いっぱい想像力をはたらかせて、自分にしか書けない絵を、自分にしかできない音楽を持ってきてほしい。そして、私は1観客の目、耳として、こうしたほうがもっと伝わるかもね、と、一緒に考えて、より作品をその子の伝えたいものに近づけることができたら、一番幸せだと思っている。
ちょっとぐらい、はみ出していても良い。だから、<自分にしか描けない絵>を持ってきてもらいたい・・。
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プールから学ぶ (3)  硬い音

このテーマは、ずいぶん長いこと考えている。いまだにはっきりとした結論が出ていないのだけど、模索途中として書いてみたい。
音が“硬い”・・・と表現するけれど、
みなさん、どうしたらピアノって 固い音が出るんでしょう・・。(・_・;)
私も答えがわかるわけではなく、目下考えているところです、ハイ。汗
指を固めているから・・という説明も聞くけど、実際は音はハンマーが弦を叩いて鳴るわけで、どんな風に打鍵しようが、音を出すのはハンマーだから、指を固くしなければ良い・・という問題ではない気がする。
今の時点で、考えているのは、プールでの飛び込み。(←相変わらず、ぶっ飛んだ例だけど)
私の小学校の先生は、良く生徒をもちあげて、プールに放り込んでいた。(いいのか?笑)
私も放り投げられたのだけど、その時、おなかや背中から水面に落ちた時の痛いこと!!!
バッチーン!!!という音とともに、めちゃめちゃ痛い。
高いところから飛び込みをするのを見たことがあるけど、その場合誰もおなかや背中から水に入らない。指先から、できるだけ細い面積で水に入っていく。
話を変えて、拍手をする時。誰も、両手の手のひら同士をまっ平らにして、左右合わせてはたたかないだろう。そうすると、てのひらが一気に痛くなる。少し手のひらを丸めるようにしてたたく。
この3つの例から思ったことは、平面と平面が面積が広くあたると痛いということ。それは、二つの平面がぶつかり合ってしまうから。
ハンマーは柔らかいもので包まれている。でも、たくさん弾けば弾くほど、ハンマーがいつもあたる弦の場所がへこんできて、溝のようになる。その部分は、かなり硬い<踏み固められた土>のようになっていると思う。そこに、ばんっと金属の弦があたれば、相当固い音が出るのは想像できる。
だから、打鍵を必要以上に早くすると、平面同士が衝突して、硬い音が出ているんじゃないだろうか・・・と思っている。それを避けるために、できる限り必要な点だけを弦に当てる。つまり、ハンマーが弦に当たったら、すぐに解放しないといけない。そのためには、たとえ大きな音でも、微妙なコントロールが必要になる。いつもブログで書いている指先でのコントロール。
だから、ある意味、指を固くしない・・・という表現も間違いではない気がする。
たとえば古い弾きつぶされた楽器。たまに、いくらコントロールしてもどうしても金属音になってしまう時がある。それは、
ハンマーの溝が踏み固められて、かっちかちになってるんじゃないだろうか。それと同時に、必要以上に押し込む打鍵をすると、ハンマーに弦が食い込むから、響きが止まってしまうというのももちろんあると思うけど。
うーん、今の私に考えられるのはこんな感じ。
なにかほかの意見があったら是非知りたいところだな・・・。
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ドイツで歯医者さん(3) -親知らず-

(´- `)フッ(´― `)フフッ(´―+`)キラッ
生還♪
終わった…終わったぁー!
右下、おやしらず治療終了♪
私の親知らずは、下二本とも見事に横に倒れていて、
他の奥歯をぐいぐい押している状態。だから、歯茎を切り開いて、歯を砕いて取り出し、
また糸で縫うという、ミニ手術なわけ。
緊張する中、家を出る前に、腫れて顔の形が変わることを怖がっている私に、
パパからの応援(?)メールが届く:
パパ:思いがけず美人になるかもしれないぞ ( ̄― ̄)ニヤリッ
こんなエールを胸に、歯医者に向かったのでした。何たる父親 (-o-)ボソッ
ドイツでは、知人の話によると、歯医者さんでは親知らずを抜けない場合があって、紹介状を持って病院にいくことになるらしい。その場合、目隠しをされて、“手術室”・・・っという雰囲気になる場合もあるとか。
なぜか私の歯医者さんは、自分の診療所で、ふつうにやる気満々。私にとっても慣れた場所なので、安心。しかも彼は麻酔の注射が本当にうまい。ゆっくり息を吸ってね~といわれているうちに、チクッとしたかどうかすら怪しい、というほどしか感じない。
麻酔が効いてしまえば治療中はなんにも痛くないので、ひと安心。
・・・・ただ・・・・
治療中、ものすごい勢いであご骨を押すために、対角線上にある左の耳の下のあたりからあごが外れそうになる。一度は、ちょっとまって・・とお願いして、顎を休ませてもらった。
口の中は、まさに工事現場。ガーガー、ゴンゴン、ギ―という音に絶えること1時間、
やっと取れたらしい。どうも、根っこがしっかり植わっていたようで、それを取るのに
相当苦労していたみたい。
先生が声をかけたので目を開けると、先生の手には、長-い糸が・・・・
-歯茎を切り開いたので、縫うからね~。
(私:あなたの家庭科の成績が良かったことを祈るばかりです・・・・)
というわけで、糸でピッと縫われ、頬を冷やす道具と痛み止めを受け取り、終わったのでした。
帰り際、例のアシスタントA子が
大事なことが二つあるわ♪
―腫れないために、今からすぐ冷やし続けるのよ。腫れないためによ、大事なのよ、腫れないために・・・!!
それとね、
―寝るときは、抜いたほうの右側のほっぺたを絶対下にして寝ないでね。
すかさずA子に私は:
―寝るときは、左を下にして寝るけど、眠ってからはどんな方向になるか保証できません・・・(・_・;) 
と告げておいた。
“腫れないために冷やして!”・・・を10回ほど繰り返されたため、
私は、それから夜まで、ずぅぅぅぅぅっと頬に冷やすものを当て続けておりました。
そのおかげか、翌日全く腫れず、やった!と思い、翌日は冷やさずに生活していたところ・・・
その夜、ずんずんと鈍い痛みが・・・。
そして、ぷくっとほっぺたが少しだけ腫れたのでした。
おそるべきA子。タカをくくって二日目に冷やさなかったために、少し腫れてしまった。
‐冷やすのよぉ! ヽ(`○´)/ 
と力説していたA子の顔がよみがえる。
Dは,そんな私の顔をじっと見て:
―うーん、それは間違いなく腫れてるね。単に太っただけではない・・・。
と。(-_-#)
この腫れ、いつおさまるのかなぁ・・・というか、まだ左下に一本あるし・・・。
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聴衆から学ぶ

先日、とある本番でピアノコンチェルトを弾いた。ど緊張で舞台に出て行き、ピアノの椅子に座ると、なんといすの高さが一番高いところになっていた。普段は朝のリハーサルの時のまま、私にちょうど良い高さになっていることが多いのに。
ただでさえ、背が高い私がその椅子に座ると、高すぎるのは一目瞭然。
普段、椅子は低めの位置で弾いているため、オーケストラからもお客さんからも360度から見られている中で、上から下まで椅子を下さなければいけない羽目になった。
椅子は、左右に回すものがついているタイプ。緊張も重なって、回しても上がってるのか下がっているのか判断がつかず、結局、立ち上がって椅子の後ろへまわり、しゃがんで椅子を回し始めた。
すると、2000人を超えるお客さんから、笑いの渦が起きたのだ。まだ緊張が解けない私は、早く椅子を下げないと・・・と必死で取っ手を回すのだが、それを見てまた大爆笑。
さらに椅子に座って高さを確かめたところ、まだ高いので、首をかしげてまた調節しようと椅子の横の回すところに手をかけると、またまた、わっはっはとまでの笑い声。
前の方の席の人など、笑いすぎて、ぜぇぜぇ、ひぃーひぃーとまで言っている。それにあわせて、後ろの席からは会場に拍手まで起きてしまった。
そこでふと、私は
あ・・・そうなんだ、みんなエンタテイメントとして演奏会に来てるんだった。
楽しみ来てるんだよな。
と気づかされた。ちゃんと弾けるか、そんなことを見に来てるわけじゃない。お客さんは、安らぎと美しい音楽を求めて、娯楽を求めて来てるんだと。
すると、すぅっと緊張が和らいだ。
私の役割は、オーケストラと一体になって、“音楽”をホールいっぱいに奏でることなんだと。
ちゃんと弾けるかどうか・・・、大切なのはそんなことではない。
私の感じる音楽を、私の言葉で、この楽器から1つずつ“語っていけば良い”のだと
とはいっても、ホール全体から笑いを取る予定ではなかったため(笑)、ちょっとびっくりして、私の方の集中力が不十分な状態から演奏に入ってしまったけれど、本当にありがたいことを教えてもらった。またひとつ、本番を通してお客さんから勉強させていただいた。
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ふむ・・。

時々、外国人からふとされる質問に戸惑うことがある。
この間、ある日本のレストランで、私が
“お水をください”
と言ったのを聞いた韓国人の友人Kが
K: ねえ、お水の “お” って何? と。
すかさず私は
―丁寧語だよ。(^。^)
と回答。
K:でも、なんで人間じゃなくて、物に対して丁寧に話すの?
私:物に対してというより、その方が会話がエレガントになるから。ほら、”みず“っていうよりね。
K:でもさ、机をお机とはいわないでしょ?お学校とか・・・
私:ん・・うーん。(;^_^A アセアセ・・・
(。・_・。)ノ はい、わかりません  ←私、そそくさと降参
てなわけ。確かにそうだけど、疑問を持つ視点に驚く。
先日は、ある演奏会を聴いていて、1曲目が終わった直後、ぱちぱちと拍手をしていたら、隣にいたルーマニアの友人が
―ねえ、“か”と“こ”ってどう違うの?
私:へ??
友人:ほら、YurikoとYurikaとかのoとaの違いって何?
(私の心の中)
って、私たちいま演奏会だよねぇ・・・。なんでまたそんな質問が。(+_+)
ちなみに、私はこう答えておきました。
―――それは、oとaっていうより、“子”と“か”では、漢字が違うんだよ。
子は基本的に、“女の子”という意味でつけることが多いけど、“か”は漢字によって華(はな)とか香(かおり)とか、いろんな意味合いがあるんだ。Oとaとかじゃなくて、使う意味が違う
友人:へえ。なるほど。
ってこの会話、演奏会の曲と曲の間に行われたわけ。あまりに突拍子もないところから、音楽と全く関係ない質問が来るから、落ち着いて聴いてられない・・・。
そういえば、フランス語でもある。
Pas terribleという言い回し。Pasは否定の言葉(英語でいうnot)で、terribleは英語と同じで“ひどい”。なので、普通に考えると、pas terribleは 悪くない わけだ。
私がベルリンに来て間もないころ、レッスンで演奏して、師匠であったDに
―Pas terrible―
といわれるたびに、あ、悪くないんだ! (^。^)
と喜んで帰っていたのでした。
で、数ヶ月後、本当の意味を知った時の衝撃は・・・・
Pas terribleは “良くないねぇ”、あるいは “良いとは言えないねぇ“ という言い回しなのでした。(>_<”) こら、まぎらわしいぞ、フランス語!

ドイツで歯医者さん(2)

く…来る…とうとう来てしまう、恐怖のXデーが。もう数ヶ月前から、緊張しっぱなしである。
そう、お・や・し・ら・ずを抜く日がとうとう来てしまったのだ。
よりにもよってなぜか、“こどもの日”。カレンダーを見るたび、はぁ・・((+_+))と
ため息ばかりだ。
ところで、うちの歯医者さん。前のブログにも書いたように、アシスタントの子がなにかと面白い。とは言っても、本人はいたって真面目なわけだが。
先日、そのアシスタントの子に担当してもらった。彼女は、背が小さい。で、小さい彼女が診療するための椅子に座るとさらに当然低くなる。その場合、私たち患者としては、彼女が自分の椅子の高さをあげてくれれば良いのであるが、彼女はなにしろ生まれ持ってのマイペース。診療台に寝ている私の口の高さが彼女の背丈に合うよう、限りなく診療台を倒していくのである。
診療室のシステムは、ドイツも日本と全く同じ。診療台に座って、治療を始めるとき椅子の背を倒していくのだけれど、普通180度まで倒すことすら珍しいと思うんだよな。でも彼女は220度ぐらいまで倒す。どういうことかわかります?つまり頭のほうが足より低くなるまで倒すわけですよ。頭に血がのぼるじゃん!そう。本当に頭に血がのぼっている(下がっている??)こと多々あり。なわけです。
で、彼女(以下A)は治療中ふと、自分の世界に飛んで行ってしまう。その日もまた、ガーっと治療中、ふと彼女が手を止めた。そして、飛んで行った・・・・・・
A:私ね、音楽って素敵だと思うわ。クラシックを聴くのがすごく好きなの。
私:んが・・・(口の中に、つばを吸い取るものを突っ込まれておりますんで、こうしかしゃべれません。)ちなみに、んが=そうですねぇ。(訳)
A:私、全然自分では演奏できないけど、いろいろ聴くのよ♪
私:がぁ・・・ (訳=そうですかぁ) 
A:この間なんてね、交響曲を聴いたの。ベルリオーズの!
私:ほへ・・・ (訳=へぇ)    *心の声:って、えらいマニアだな、趣味が。
A:あの曲には、愛を感じるわ!愛よ愛!すてきねぇ・・・・(* ̄。 ̄*)ウットリ
私:・・・・・            
どうでも良いが、血がのぼる・・・と苦しんでいたところ、彼女は我にかえり、また無言で、がーがーごりごり治療を始めたのであった。
こんな歯医者で私は、こどもの日に歯を抜くのである。うぅ・・いやだぁ・・・。
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プールから学ぶ?! (2)  ミニ・ビート板

弱く深みのある和音で曲を始める・・・とくに緊張しているときなど、本当に難しい。
ぼかんと思わぬ大きな音が出てしまったり、逆に鳴り損ねてしまったり。誰にでもある経験だろう。
まず、解決策を考える前に、どうなることでこのアクシデントが起きているかを考えてみたい。これまでのブログでも何度か触れたように、ピアノという楽器はハンマーが弦をたたくことで音となる。ハンマーが思ったより速くあるいは強くあたり過ぎたり、あるいは逆にあたり損なったりしてしまうことで、鳴り損ねや鳴りすぎということが起きる。
もちろんピアノを弾く時に、どれほどの速度で、どういうタイミングで・・・といちいち考えて計算しているわけではない。それをある程度自動的に感じられるようにするために、普段から“意味のある練習”を通して、感覚を体に染み込ませていくのだ。
今回のテーマである“静かに、そして深く豊かな音”を得るためには、完璧な打鍵のタイミングをわかっていることが必要となる。打鍵というのは、鍵盤が“底にあたって”初めてできるわけだから、そのタイミングをつかむためには、鍵盤が降りるときの鍵盤の重さ、つまり鍵盤が上に戻ろうとする力を指先で感じている必要がある。鍵盤が戻ろうとする力を感じながら、それに見合った速度で鍵盤を下ろし打鍵をする。
ゆっくりとした深い丸みのある温かい音。たとえば、ベートーヴェン作品110の1楽章の始め、あるいは作品109の3楽章の始め、あるいはショパンのバラード4番の出だしなどなど。ぷるぷるっと震えてしまうのも稀ではない。
こういう時に、安心して弾けるための、<指先が捉えている鍵盤の感覚>を、今回は理屈ではなく感覚で説明してみたい。
プールで泳ぎを覚え始めのころに使うビート板。これを使ったことがある人は多いだろう。もしもなければ、発泡スチロールの板でも良い。これをちっちゃく5センチ四方ぐらいに切ったところをイメージしてほしい。イメージで十分!
これが、私の言うミニビート板。(^。^)
これを持ってお風呂か何かで、湯船につかっているところをイメージしてみよう。お湯にミニビート板を浮かべて、それを人差し指と中指の指の腹だけを使って、お湯の中に5センチほど静めるとする。手首や腕に無理をせず、ミニビート板が斜めにならないように、指の力でぐっと水面5センチぐらいの深さに沈める。すると水圧が指先にかかって、ミニビート板が押し戻されそうになるので、それに負けないように、そしてビート板が斜めにならないようにぐっと手のひらをしっかりさせて、指の腹で水に沈める感じがわかるのではないかな。
ゆっくりと静かに深い音を出すとき、このお風呂での指先の感覚が非常によく似ている。少し感じがつかめるかな・・・

プールから学ぶ?! (1) -ターン-

難しいところが弾きづらい場合、どうして弾きづらいのか、練習に入る前にその原因を探すことが大切だ。様々な難しさがあると思うけれど、ピアノ演奏でよくあることの一つ、大きく素早いポジション移動のときのミスについて書いてみたい。これは主に2つの原因が挙げられると思う。
1) これから来る難しい個所が気になって、目の前の事が不安定になる。
2) 移動に無駄があり遅くなっている。
最初の点については、階段を降りるようなものだ。ふと、先に気が行ったために、目の前の段を踏み外しそうになり、ひやっとすることがある。今弾いている音をきちんと弾くだけでなく、きちんと出した音を耳でキャッチ(聴く)してから次の難しいところを弾くということを常に頭に置いておくだけで、良い意味で演奏に安定感が出る。
2)について詳しく考えてみたい。これは、“速い移動をしなければいけない”という思いから来る間違いで、意外と多い。たとえば左手で、低いバス1音と真ん中あたりの音域の和音を交互に弾かなければいけないとする。バスを弾いて素早く次の和音に移動しなければいけないから・・・と左右への鋭い動きで鍵盤上を右へ左へと反復横とびのように(笑)移動して演奏しようとするケースが良くみられる。
これは本当に一番早い動きなのだろうか。
プールで泳ぐときのターンをイメージしてみよう。壁にタッチしてターンする方法ももちろんあるが、速いのはクロールなどで見る、壁の手前でくるっとするターン(クイックターン)だ。
水泳で壁にタッチしてから向きを変えるのと同じように、左右への鋭い行き来は速いようで実は大きく時間のロスをする。それは方向転換をする時にその向きが180度反対になってしまうので、今向かった速度にブレーキをかけて反対方向に動くことになるからだ。左右にそれを続ければスタートしてはブレーキをかけるという繰り返しになるため大変な運動になる割に速い移動ができない。
少ないエネルギーで一番早く動けるのはどういう時だろうか。
それは“円”を描くこと。
肘を軸にして、腕を回してみよう。左右素早く腕を動かすよりも、肘を中心にして円を描くほうが少ないエネルギーで、楽に早く動かせるのがわかるのではないだろうか。ここで大切なのは、肘を軸にするということ。円を描くということは、軸がないと非常に難しい。
コンパスでも軸がある。アイススケートで同じところで早くぐるぐるまわる演技があるが、これも体の軸が命になると思う。同じことがピアノでも言え、上記の場合ではその軸が肘である。
この“円”の動き、もちろん目に見えないほど鍵盤のそばで小さく行わないといけない。大きな円を描いていては逆効果で、かえって時間ロスになってしまう。自然な動きとは、移動するバスと和音の中間あたりに肘が来るように置き、それを軸として鍵盤の“ほんの”少し上を曲線を描くようにバスを探しに行き、バスを弾くと同時に鍵盤に這うように戻る。這うように行って這うように戻るのではなく、ほんの少~しだけ上に山を描く様にバスを探しに行くというのがポイント。そしてバスを弾いたと同時に真ん中の和音に戻る。その動きを線で描くとすると、横に長~い楕円のような動きだ。もちろん例外もあるのだけれど、概ねの基本はこの動きが利用できるだろう。
ピアノに限らず、楽器を演奏する際、体ができる限り自然な状態に近いほうが良い。バイオリンでも、チェロでも、クラリネットでも・・良く考えてみると、体と楽器が一体になるように、両腕で円を描くように楽器を包み込んでいる。ピアノも同じ。演奏でこの円の原理という自然な動きは本当に良く使う。
ショパンは手が小さい人だった。彼は本当にうまくこの円の動きを使ったテクニックで
曲を書いている。大きな移動に限らず、円のテクニックはショパン演奏の基本だと思う。そう考えてテクニックを探してみると面白いかもしれない。
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ドイツで歯医者さん (1)

私のかかりつけの歯医者さんは、とっても良い人♪ベルリンに来て間もないころから
お世話になっていて、その当時は私のドイツ語がまずかったため、悪戦苦闘。
それでも熱心に歯の状況とこれからする治療を身振り手振りで伝えようとしてくれる頼りある若い歯医者さん(以下G先生)。そして、そのアシスタントとして歯のお掃除などもしてくれる女の子(A)。この二人がもう10年来、私の担当医である。
で、このアシスタントの子が何とも言えない味なのだ。彼女はおそらく私より数歳若いと思う。もともと、事あるごとに自分の世界にすーぅっと入っていそうな、独特オーラが出ている。ある時なんぞは、治療中にふと、
A: ねえ。結婚ってやっぱり良いものかしら・・(¨ )
と遠い目で尋ねられ、
私:へ? (・_・;) あ、まあ良いんではないでしょうかねぇ。
と歯切れのない返事をした私。歯医者でこんな会話あるのか、普通・・・。
その彼女が先日治療に行った時に、顔を見るなり。
A:あなた、ご主人ともうすぐ演奏会するんだってね、ベルリンで!
私:えー、何でご存じなんですか?
とまたまた、歯医者というより近所の奥さん・・ってな感じの会話である。なんでもクラシック音楽を聴くのが趣味だとか。それで演奏会情報を見ていたらDと私の名前が目に入り(Dもこの歯医者でお世話になっている)早速チケットを予約したらしいとのこと。
A:しかもね、G先生ご夫妻にもその話をして、予約させちゃた♪
私:あのぅ・・・・。G先生はクラシックなんぞ興味ないのではないでしょうか・・・かえって迷惑では・・と気をもんでいるうちにG先生登場。
G先生:いやぁ、元気?君たちのコンサートのチケット予約したよ!アシスタントAに勧められてねー。で、どんな演奏会? ←(ってチケット取ってから質問?)
私:えーっと、○×団体というのが企画していて・・・・二台ピアノで・・・。
G先生:ふーん。ところでそれってクラシック音楽?
私:(o ̄∇ ̄)o!!ガーン
やっぱり・・。曲目よりも何よりも、クラシックのクの字も知らない先生であった。大丈夫かなぁ・・・。
私:でもその日もお仕事があるんじゃないですか?
G先生:大丈夫。その日は特別にアレンジして、早く店締めをすることにしたから♪
(-o-) いいのか、この歯医者? 
G先生は、本当に辛抱強い。何しろ、はい、歯をかみあわせてー、ハイ、カチカチいわせてー。ほい、こすり合わせて、などということをいわれても、何がかみ合わせて、なにが、カチカチいわせるかなんて、来たばかり頃の私にはそんなドイツ語分かるわけなし。なので、あたふたしていると、G先生自身が一生懸命、がちがち噛んで見せてくれたりとか、こすり合わせて見せてくれていたのだ。ほんとに良い人だ♪(←単純?)
先日は、アシスタントに治療してもらう日だった。この日もA子はとぉってもいい味を出していた。その話は次回に!
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で・・・(続き)

Dが帰って来たので、いきさつを“かくかくしかじか”・・(>_<)  と説明し、改めて二人で、ただでさえ鬼のように忙しくなる明日からのスケジュールとにらめっこをしながら、これからしなければいけない車の手続きの数々とを思い浮かべ、 (≡д≡) ガーン と、思いっきりへこんだのでした。 警察に車を持っていかないと、と気を取り直し駐車場に戻ってエンジンをかけた。すると、 あら?ハンドルがぐっらぐら。今にもはずれそう。しかも、ウインカーの棒が ポキッと折られてなくなってる! ・・・・運転できません。(・_・;) あらためて警察に電話し、車を持って行けないということを話した末、夜になってやっと刑事課の二人が来て車に残った指紋などを調査。犯人はゴム手袋をしていたらしく、ゴム手袋の跡を警察が見せてくれた。 警察によると、今日はこの駐車場に車を置いている人からひっきりなしに電話があったそう。おそらくたくさんの車がまたもややられた模様。 そういうわけで私たちの車は動かせないので、明日の朝8時に牽引車が取りに来ることになったのでした。早起きしなきゃ。泣 この間11月に直したばかりの後部ガラスと扉を、またも修理しないといけないなんて。 こんなことなら車を売ってしまおうかな。と話している我々でした。いずれにしても あの地下駐車場は、明日中に契約破棄です。 もう。

日常、遭遇したこと、思ったこと・・・を飾らず気ままに書いて行きたいと思います。